|長い間抱えていたジレンマ
本当に豊かな暮らしとはどういうことだろう。
ウサコちゃんに出会い、ここにきて私の20代の原点に立ち返ります。家という箱だけでなく、家を含めた環境、暮らし方を追求していきたい。 これまで建築設計の仕事をしながら、ずっと抱えていたジレンマがあります。 それは建築というものは、自分一人ですべてコントロールすることはできない、ということです。そして家というのは、建築士の自己満足のための作品ではありません。 また、自分だけがどんなに熱い想いを持っていたとしても、本当にいいものができるとは限りません。最終的には、直接手で触れ家をつくるのは職人さんが大切なんだ、ということです。
そして、①建築士が設計→②施工会社→③職人(①がつくった図面をもとにつくる) という構図が本当に施主のためのいい家ができるのか、という疑問を持っていました。
はじめから、①と③が同じ思いを共有し、対等の立場で一緒に学んだり、本質を追求できるような、そんな最強のチームを組むことができたら・・・。
|理想の仕事のパートナー願望リスト
ジレンマは大きくなるばかり。願うだけなら自由と、理想とする仕事のパートナーを思い描き続けました。 ↓ イ)自分の仕事を愛し、心のこもった仕事をする ロ)木のことをよく知り、確かな腕がある ハ)常に学び続ける姿勢があり、かつ思考は柔軟 ニ)地球環境、そこで暮らす人の健康を考えている ホ)自分より大きな自然というものに対してきちんとした考えを持っている ヘ)長い時間軸で物事を見れる ト)人間的にも尊敬できる そんな大工さんと一緒に仕事がしたい、という気持ちが自分の中で切実なほど膨らんでいました。でももちろん、私が望むような大工さんに出会うのはかなり難易度が高い(高望み!)。なぜなら、今主流の家づくりの方向性が、私が望む方向と違うからです。
|家づくりはゴミづくりの現状
戦後復興期、高度経済成長期を経て、早く安く便利にを合言葉に、大量生産・大量消費の方向へと舵が切られました。長い間、自然と寄り添いながら暮らし、自然に還る素材で家づくりをしてきた私たち日本人ですが、残念なことに現在のほとんどの家づくりはゴミづくりとなっている現状があります。 安く早くが求められる今、大量生産された規格品の新建材を使います。輸入木材、合板や集成材、ボードにビニールクロス、外壁はサイディング。たとえ「木の家」と謳っていても、構造材や下地は覆い隠され、その木がどこから来たかなんて施主も設計士も作り手も気にすることはありません。 そのような家づくりにはつくり手の技術は必要とされません。規格品と違って、何一つ同じものがない自然素材を扱うには、技術が要ります。つまり、志のある技術のある職人さんというのは、現在では希少価値が高いのです。
|大工さんとの奇跡のような出会い
ある日、ウサコちゃんに誘われやる気なく連れられて行った構造見学会。そこで奇跡的にも、私の高望みリストにぴったりと合致する大工さんに会いました。 宮大工として経験を積み、10年前に独立して自然素材しか使わない家づくりをしている大工さん。小さい時から地球環境を気にしていたという。新建材は本能的に我慢がならないらしい。手刻みで木を加工し、金物も集成材も合板も、プラスターボードですら使わない。
今の時代、悪い事せん方が難しいことない? 素材にしても。だから100%は求めんのよ。今の時代無理。それやったら、車に乗るなっていう話になる。だから、もう仕方ないとこは仕方ない。なるべく、悪いものを出す量を減らすみたいな感じ。 「水木さんの言葉~インタビュー記事より」
構造見学会から間もなくして、「一緒に仕事がしたい」と連絡をもらいました。
話していくうちに、水木さんは私が描いていた理想以上の人だったことが分かりました。 それは・・・ ↓ チ)年が近くてこれからまだまだやれるぞ リ)思いやりの塊 ヌ)ゆるい空気が流れる ル)ユーモアがある! ヲ)釣りキチ(ポーランド人の彼との共通点)
まあなんといっても、一番は人間的な温かさを感じることです。そして水木さん周りの大工さんたちも家族のような温かさで、とっても居心地がいいのです。
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