コラム1】 そのフローリング、どこからきたの?
知らずに環境破壊に加担しないために
1.現状を知ることからすべてははじまる
みなさんは日本の建設現場で使われている合板のために、海外の天然林が伐採され、地球上のかけがえのない生態系が破壊されつづけているという現状を知っていますか?
マレーシアのサラワクという地域で、違法伐採により木材貿易を行っている主要な企業があります。
その最大にして重要な輸出国は、実は日本なのです。
サラワクの熱帯林は過去数十年、ものすごい勢いで失われつづけていますが、その多くは日本の木材需要がもたらす伐採が原因となっています。
これって、とてもショックな話ですよね。
まさか知らず知らずのうちに私たちは、違法伐採に加担し、貴重な森林を破壊しているなんて。
実際に行われた調査では、多くの住宅建設会社では違法伐採によるフローリング材を購入し使用していることが分かりました(JATAN 熱帯林行動ネットワークより)。
またビル建築時に用いられるコンクリート型枠には、熱帯材などの合板が用いられています。
熱帯材合板の型枠は使いやすく、安いのです。
環境破壊だけでなく、社会的な影響も見過ごすことはできません。
企業の利益のために、そして元をたどれば私たちの快適な生活のために、そこで暮らす先住民の先祖伝来の森、彼らの権利や生活が強制的、暴力的に奪われているのです。

2.そもそも、なぜこんなことになってしまったの?
戦後復興期を経て、高度成長期に入り、早く、安く、便利に、と効率を追求し経済優先の社会へと移行していったことが根本にあげられます。
日本は1960年代に急速に木材輸入量を増加させて以降、大量の木材を輸入し続けてきました。
木材の輸入を自由化して以降、国内の林業は安い輸入材に太刀打ちできなくなりました。
日本に木材が余っているのに、「安い」という理由で輸入材の方が使われ続けているのです。
戦後大規模な植林を行った日本の人工林は手を入れることができず、活用できないまま放置された状態になっています。
日本で手に入る自然素材を使って職人さんが丁寧に作る「手間をかける家づくり」は時代遅れとなり、大量生産・大量消費型の使い捨ての家時代となってしまったのです。
建築という分野でも仕事が細分化され、分業になり、すべてのプロセスを見渡すことがとても難しくなりました。
施主も、仕様を選ぶ設計士も、施工会社も、職人も、そのフローリング材の合板がどこから来たのかなんて知らないもの、というわけです。
スーパーに並ぶ野菜のように産地が書かれているわけではないし、見た目がよくて、安ければいいじゃない。
それが問題が非常に見えなくなってしまった要因とも言えそうです。
3.知らずに環境破壊に加担しないために、私たちができること
まずは関心を持つこと。
建築の仕事に関わるすべての人たち(卸業者だけでなく、経営者、設計士、職人、営業も含め)、そしてその家で暮らす人も、購入する木材がどこからきたのか、およぼすインパクトに関心をもつことが大切です。
その上で具体的には、日本の木材(できれば地元産)を使って家を建てることで、海外での違法伐採、環境破壊に加担しないことに繋がり、 国内の林業活性化となります。
