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コラム2】 エコハウスの本質を探る

「省エネ・自然素材の家」は本当に環境にやさしい家?

1.エコの本質からズレている!?

環境や健康問題に意識が高い人なら、無垢のフローリングに漆喰の塗壁、そして屋根には太陽光を乗せ、高い省エネ基準を満たした家で環境にやさしい暮らしをしたいと考えるかもしれません。

ところが実際には、たとえ省エネ、自然素材の家とアピールされていても、地球上の貴重な資源のことや環境に負荷をかけない、といった本来のエコついての視点で見ると、必ずしもそうとうは限りません。

というのは、環境にいかにもよさそうな謳い文句であっても現在の多くの家は、材料の調達、製造過程から廃棄までを考えた省エネやエコハウスではないからです。

本当のエコを考えたら、使用する建材のことはもちろん、長い間大切に使うことや、家が壊される際に環境に負荷をかけない、という側面も考える必要があります。

​そして私たち一人ひとりの暮らし方そのものが問われることになります。

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2.これで本当に環境にやさしい家と言えるのか?

ほとんどの住宅では新建材や合板が使われています。

無垢のフローリングや漆喰を塗って仕上げた壁でも、その下地には「合板」や「石膏ボード」を使っていることがほとんどです。

「合板」は強度もあるし、見えないところだったら別に構わないのでは、と思う人もいるでしょう。

合板の問題点は、家の寿命を短くするということです。

接着剤で張り合わせてつくられている合板は、新しいときには強度があっても時間をかけて湿気を含でいくと強度が落ちて行きます。湿度が低い海外と違って、日本のように湿度が高い気候の場所では、20年、30年経つと合板を使って建てられた家の強度はガタ落ちなので、次の世代が住むころには「撤去して新しく建てましょう」ということになってしまいます。

「石膏ボード」は、どこの建築現場でも当たり前のように使われているし、石膏なんだからそれほど悪くないのではないか、と思うかもしれません。

石膏ボードの一番の問題点は、解体処分時にあります。

大量に使われている石膏ボードですが、実は捨てる際にとても厄介なのです。いまだリサイクル技術が確立していないため、ほとんどが産業廃棄物として捨てられています。石膏ボードは、硫化水素が発生する要因となりうることから、管理型最終処分場での処分が義務づけられています。また石膏の中には、石綿、砒素、カドミウムといった有害物質を含有する 製品が一部存在していることも分かりました。

もう一つ厄介なのは、表面に張り付いた仕上げ材を内部の石膏と分別しなくてはいけない手間です。分別という面倒な作業、そして処分費用が高いことから、使うのは簡単でいいけれど捨てる時には実に厄介な存在となっているのです。


石膏ボードが使われるまでの日本の住宅の壁は、竹小舞を組み土壁を塗った壁でした。
環境に負荷をかけない、まさに土に還る素材のみでつくられていたのです。

戦後大量生産・大量消費型の住宅へと変わり、現在日本の住宅は平均30年も経たないうちに建て替えられている現状があります。

安価で便利なことから戦後当たり前のように使われてきましたが、歴史は浅く、廃棄時のことまで考えられてこなかったのです。すでに年間百数十万トンが排出されているとされていますが、今後さらに廃棄が増大し、管理処分場がひっ迫するのは間違いありません。

そういった意味でも、現在のほとんどの住宅は環境にやさしい家とは言えないのです。

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3.省エネ住宅は本当にエコなの?

現在盛んに推奨されている「省エネ住宅」ですが、言葉からして一見環境にやさしいようなイメージを与えています。


「断熱化すれば省エネになる」というのが基本的な考え方で、壁や床、天井に断熱材を入れ、窓の断熱性能をアップさせることで建物を外部としっかり遮断しましょう、というものです。

建物自体の断熱性能(外皮性能)に加え、暖房、給湯、照明、換気、家電などで消費されるエネルギー量(一次エネルギー消費量)を計算して省エネの値が出されます。


要するに、設備機器を使うことを前提に、魔法瓶のように外部を遮断し、熱が逃げないから光熱費が安くて省エネでしょう、という考え方です。でもエアコンがよく効いて年間のエネルギーや光熱費を抑えることができる、というのは物事のほんの一部の側面です。

本来の省エネというのは、外皮性能が高い建物(外部と遮断された魔法瓶のような家)でしか達成できないわけではありません。外皮性能は悪くても、低いエネルギー消費量で生活できる家づくりや暮らし方があります。

その代表となるのが、日本の伝統的な木造住宅です。

夏の強い日差しの中、昔ながらの古い家を訪ね、深い軒に続く土間に入ったら、空気がひんやり涼しかったという体験をしたことはありませんか?

日本の伝統的な木造建築では、「外皮で室内を外界から遮断する」のではなく「内部と外部がゆるやかにつながる」中で、季節に応じて暮らす生活がそこにはあります。

 

外皮性能が低いからといって、エネルギーを浪費するわけではありません。

根本にあるわたしたちの暮らし方そのもの、を見つめる必要がありそうです。

2020 by 水と木の間で

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