目 次
1. シックハウスの原因 - 住まいの空気は汚染されている!?
2. シックハウスが問題になるまでのプロセス
3. シックハウス対策の法改正
4. 今日からできる予防と対策
1.シックハウスの原因 - 住まいの空気は汚染されている!?
新築やリフォームの後、家にいると具合が悪くなってしまった。頭痛や目まい、喉や目の痛み、吐き気や疲労感がある・・・これはシックハウス症候群と呼ばれる症状です。
シックハウスの主な原因
1.化学物質が含まれる建材
2.化学物質が含まれる家具や生活雑貨
3.住宅の気密性の向上
現代の家づくりでは、ビニールクロス、合板、接着剤、塗料など化学物質が含まれる建材をたくさん使うようになりました。また断熱性を向上させるため気密性の高い家を建てるようになりました。空気の逃げない暮らしの場で、化学物質で汚染された空気を吸っていることで体調が悪くなってしまう、これがシックハウス症候群です。その昔、自然の中にある木、土、石などで家づくりをしていた頃にはなかった問題でした。
2.シックハウスが問題になるまでのプロセス
戦後、新しい工業製品が登場して、安い・早い・簡単!ときたものだから、みんな大喜びで使い出した新建材。そこにはたっぷりと有害な化学物質が含まれていました。
ホルムアルデヒド
アセトアルデヒド
トルエン
キシレン
スチレン
エチルベンゼン
パラジククロロベンゼン
イソシアネート
など
これらの化学物質は温度が上がると揮発して空気中に含まれます。そんな有害なもの使うなよー!と言いたいところですが、もちろん業者だってはじめから健康被害があるとわかって使っていたわけではないんです。新建材は自然素材の欠点を補うもので、規格化・効率化するのにもってこいだったからですね。ちなみに自然素材の欠点とは、人件費と時間がかかる、大工さんの技術と腕で差が出る、割れやひびが入るとクレームが出るといったことです。
木には同じ種類でも一本一本特徴が違い癖があります。こういった規格化できない自然素材と違って工期も短くて安くできて利益も出る、となれば誰だって新しい建材を喜んで使いたくなるというわけです。施主だって安くて早くて便利がいいわけですしね。おまけに家の高気密化が進んできます。無垢の木は合板や集成材に代わり、壁の内部は土壁から断熱材に代わり、仕上げは漆喰からビニールクロスに代わる。そのうちに健康被害が続出していきます。大金をはたいて夢のマイホームを建てたのに、なんてこった!という現実が浮上してきました。
現代の一般的な家づくりで見られる現場です。見えなくなる下地には合板が使われ、内装材にはビニールクロスや塩ビシートが使われます。フローリングも合板が多く、たとえ無垢材を選んでも仕上げがウレタン樹脂で表面を塗装されることもよくあります。
このような竹木舞を編んだ土壁の現場は本当に少なくなりました。
3.シックハウス対策の法改正
日本でも欧米に続き、1980年代、90年代にシックハウスの被害を訴える人が増えていきました。2003年にやっとシックハウス対策の建築基準法が改正されました。大きな要因となっていた有害な化学物質を規制するものでした。規制された化学物質は次の2つです。
● ホルムアルデヒド:合板、合成樹脂、接着剤などに含まれる
● クロルピリホス:防蟻剤、木材の防腐材に含まれる
え?たった2つだけ?と思いませんでしたか。そうなんです、たくさんある化学物質の中で現在日本で規制されているのはこの2つだけです。防蟻剤などに使われるクロルピリホスは使用自体が禁止されましたが、ホルムアルデヒドは使用自体を禁止するのではなく、使用量を害がないくらい少なくするという対策です。
同時期に換気設備の設置も義務付けられました。換気設備をつけてきちんと換気できる家にしよう、という法規です。つまり、この規制だけでは有害物質はゼロにはならないから、しっかり換気して悪いい空気を外に出してくださいね!ということです。現在、新築時の確認申請書には24時間換気量計算書が必要です。設計時にちゃんと換気計画をしましょう、となったというわけです。
自然素材だけで家づくりをしていれば、こんな規定は必要ないのですが、現代版のお家に住んでいる方は意識的に換気してください。24時間換気といっても、一般住宅では居室に給気口・トイレに換気扇をつける第3種換気が多く、その場合は自動的に換気してくれるわけではありませんので、手動で自ら換気をおこなってくださいね。
4.今日からできる予防と対策
シックハウス対策がなされるまでに多くの人が体調不良に苦しむことになりましたが、2003年に法規制がされたことで被害は減少が見られました。ただし、なくなったわけではなく、このような現代の住環境からくる健康障害はより複雑になって存在しています。シックハウスが悪化し化学物質過敏症になると、建材だけでなく、殺虫剤、抗菌剤、消臭スプレー、化粧品、柔軟剤などありとあらゆる化学物質に過敏に反応していまいます。そして電磁波過敏症の方も増えています。調査研究では、特にアレルギーを持っている人や女性は被害を受けやすいことが分かっています。ある日ある時期から花粉症になってしまうように、いつ、誰でもなりうる現代の健康障害なのです。何よりも大切なのは、予防です。
対策 その1
化学物質の含まれるものを減らす
・建材は自然素材を選ぶ
・家具や雑貨も自然素材のものを選ぶ
・薬剤や殺虫剤を使わない
対策 その2
換気をこまめにして掃除をかんばる
・室内の空気の入れ替え
・カビやダニがいない環境をつくる
最も注意が必要な時期
新築・リフォーム直後
新築やリフォームの直後は空気中の化学物質濃度が高くなります。3年、5年と時間が経つにつれて発散量は減っていきます。クロスや塩ビシート床を貼りたて、合板のフローリングを施工したばかりの部屋で長時間過ごすのはできるだけ避けてください。
気温が高くなる季節
気温が高くなるとホルムアルデヒドなどの化学物質の放散量が上昇します。夏にエアコンをつけて窓を閉め切っていると、空気中にたっぷりと含まれた化学物質を吸いこんでしまうことになります。工事直後のはじめの夏に要注意です。こまめに空気の入れ替えをしましょう。
【室温とホルムアルデヒド放散量】
このグラフから分かるように気温が高くなると放散量が上昇します。新築やリフォーム後に生活スタートしたはじめの夏は特に注意が必要です。こまめに換気をして空気を入れ替えることを意識してくださいね!