目 次
1. 化学物質過敏症は、シックハウス・電磁波過敏症とつながっている
2. 化学物質過敏症の要因と症状
3. 発症しやすい人の3つの特徴
4. 今日からできる具体的な対策
1.化学物質過敏症は、シックハウス・電磁波過敏症とつながっている
シックハウス症候群は、新築やリフォームの後、頭痛や目まい、喉や目の痛み、吐き気などがあり、家にいることで具合が悪くなる症状ですが、家(又は職場などの場の環境)から出れば症状は改善されます。ところが化学物質過敏症になってしまうと、シックハウス症候群の主な要因となる建材だけでなく、柔軟剤や芳香剤、抗菌剤や消臭スプレー、受動喫煙など幅広い化学物質に敏感に反応してしまうようになります。そして近年は、パソコン、スマホ、携帯基地局などの普及により、電磁波過敏症になる人も増えています。シックハウス症候群、化学物質過敏症、電磁波過敏症は、先進国を中心に増加している環境障害なのです。
化学物質過敏症になってしまうと日常生活を送るのが難しくなります。気の持ちようでしょう?と無神経なことを言ってくる人もいたりして、周りの人は理解してくれない中で本当につらい思いをしている人も多い現状があります。知らない人が多いからこそ周囲の理解が得られにくい、これはつらいですね。実際に、化学物質過敏症の人は日常生活が困難なので山にこもっている人も多いのです。
現代の住環境にいる私たちにとって、これは決して他人事ではないのです。
発症のプロセスと特徴
1.新築・リフォーム後にシックハウス症候群を発症しやすい
2.その段階で要因を取り除けば、症状は緩和したり治ったりするが、ほおっておくと化学物質過敏症に移行する
3.化学物質過敏症と診断された患者の60%は電磁波にも敏感だった
これは30年間に渡って行われた調査結果から分かったことです(「臨床環境医学:疫学調査から見た日本の環境過敏症患者の実態と今後の展望」より)。これらの症状は、個々に独立しているのではなく、つながっていて、シックハウス症候群になった人はその後、化学物質過敏症や電磁波過敏症になりやすいということが分かっています。
2.化学物質過敏症の要因と症状
要因となるもの
化学物質過敏症になると、ここに挙げたようなプロダクトに含まれる通常であれば感じないくらいの微量な化学物質に過敏に反応してしまうようになります。柔軟剤などの香りで気分が悪くなる「香害」という言葉は聞いたことがあるかもしれません。発症しないようにするにはこれらの要因を日常生活からできるだけ取り除くことが必要ですが、建材でも100%自然素材が難しいように、ありふれた日用品だからこそ、現代の生活で避けることはとても難しいですね。
主な症状
・頭痛
・めまい
・全身倦怠感
・吐き気
・睡眠障害
・呼吸困難
・咳
・動悸
・腹痛
・下痢
・思考力や集中力の低下
・うつ状態
など
3.発症しやすい人の3つの特徴
日本だけでなく世界で行われてきた過去数十年に渡る調査結果から、シックハウス症候群、化学物質過敏症、電磁波過敏症などになりやすい人の特徴が分かってきました。
1)女性が多い
発症者の75%が女性
2)アレリギー疾患を抱えている人
発症者の85%がアレルギー疾患あり
3)年齢のピークは40~49歳
次のピークは55~59歳
この3つの特徴について、もう少し詳しく解説します。
1)発症者の75%が女性
その理由は、女性はホルモンの変動があり内分泌系が敏感であるからと考えられています。うつ病も女性の方がなりやすいことが分かっています。でもだからと言って男性は発症しないわけではありません。4人に1人は男性なわけですから。
2)85%がアレルギー疾患がある人
・花粉症
・ハウスダストアレルギー
・薬物アレルギー
・アレルギー性鼻炎
・アトピー性皮膚炎
・気管支喘息
花粉症の人は多いでしょうからドキッとしてしまいますね。化学物質過敏症は、花粉症と同じように、いつ誰でも発症しうる環境障害ですので、けっして他人事ではないのです。
3)年齢のピークは40~49歳
発症者の第一ピークは40~49歳、続いて55~59歳となっています。
ある程度年を重ねてからがピークなのは、これまで吸い続けた化学物質が体の中にたまってきているからでしょうか。多忙でストレスを抱えやすい年齢でもありますしね。
上記の特徴に当てはまる人は、特に気をつける必要があります。
4.今日からできる具体的な対策
一番の予防や対策は、要因をなくすこと。要因をなくせば予防改善となることが明らかとなった例を挙げてみます。受動喫煙に関する調査で、1999~2003年と2012~2015年を比較すると、昔と比べ受動喫煙で苦しむ人があきらかに減っていました。つまり、2003年に健康増進法ができて公共の場でたばこを吸うことが規制するようになったことで受動喫煙で苦しむ人が減ったと考えられます。またシックハウス対策がなされるまでの1990年代に多くの人が体調不良に苦しむことになりましたが、2003年に法規制がされたことでシックハウスの被害は減少しました。
体の中に化学物質を取り込まない、要因となるプロダクトを使わない、これが一番の予防であり対策です。受動喫煙やシックハウス症候群を発症する人は減ったとはいえ、柔軟剤などの芳香剤の被害は増加していて、このような現代の住環境からくる健康障害はより複雑になって存在しています。何よりも大切なのは予防と対策です。
対策その1:身の回りのものから化学物質が含まれる製品を排除する
→ 殺虫剤、抗菌剤、消臭剤、柔軟剤、芳香剤はさようなら
→ 洗濯や食器洗いには純石鹸洗剤を使う
→ 化粧品はより自然に近いものを使う
対策その2:家具や雑貨は自然素材のものを選ぶ
→ 無垢材を選ぶ(※表面的には木に見えても、内部で合板+接着剤を使用している家具は多いので注意)
対策その3:新築やリフォーム時には自然素材の建材を選ぶ
→ 安全な建材の見分け方はこちらのコラムをどうぞ
対策その4:換気と掃除ををこまめにする
→ 意識的に室内の空気の入れ替えをする
→掃除をまめにすることでカビやダニがいない環境をつくる
現代の私たちの生活で100%避けることは無理ですが、まずは知らないと何もはじまりません。できることはケミカルなものを少しでも減らしていくこと。知らずに悪い環境の中に身を置き続けるのと、なるべく化学物質のない環境に身を置くのでは結果が違います。体質や化学物質の許容量が違うので個人差がありますが、誰がいつ発症してもおかしくないのです。一度発症すると、花粉症のように治すのが困難でずっと付き合っていかなければならない本当にやっかいな問題となってしまいます。今日からできることをしていきましょう。
昔のシンプルな暮らしと違って現代の住環境が複雑になってしまったということでしょう。生活が便利になったことで複雑な分かりにくい健康被害が生まれてしまった。自然から離れて不自然なことが多くなればなるほど私たちの心と身体は変調をきたしてしまう。要因をゼロにすることは難しくても、できることは確実にあります。暮らしを自然に近づけることを意識するのもその一つ。自然のものに囲まれた暮らしってとても気持ちがいいですしね。